ヨウ素:身体の正常な代謝を保つための成分

【ヨウ素とは】

ヨウ素は微量ミネラルの1種です。人体中ヨウ素の70〜80%は甲状腺に存在し、甲状腺ホルモンを構成します。ヨウ素を含む甲状腺ホルモンは、生殖、成長、発達等の生理的プロセスを制御し、エネルギー代謝を亢進させます。ヨウ素は、海藻類、特に昆布に高濃度で含まれるため、日本人は世界でも稀な高ヨウ素摂取国だと言われています。日常的にヨウ素を過剰摂取すると、甲状腺でのヨウ素の有機化反応が阻害されますが、甲状腺へのヨウ素輸送が低下する“脱出”現象が起こり、甲状腺ホルモンの生成量は基準範囲に維持されます。しかし、脱出現象が長期にわたれば、甲状腺ホルモンの合成に必要なヨウ素が不足するために甲状腺ホルモン合成量は低下し、軽度の場合には甲状腺機能低下、重度の場合には甲状 腺腫が発生します。

【ヨウ素が欠乏すると】

慢性的なヨウ素欠乏は、甲状腺刺激ホルモンの分泌亢進、甲状腺の異常肥大、又は過形成(いわゆる甲状腺腫)を起こし、甲状腺機能を低下させます。妊娠中のヨウ素欠乏は、死産、流産、胎児の先天異常及び胎児甲状腺機能低下(先天性甲状腺機能低下症)を招きます。重度の先天性甲状腺機能低下症は全般的な精神遅滞、低身長、聾唖、痙直を起こします。また、重度の神経学的障害を伴わず、甲状腺の萎縮と線維化を伴う粘液水腫型胎生甲状腺機能低下症を示すこともあります。

【摂取量目安】

・成人・高齢者(推定平均必要量、推奨量)

適切なヨウ素の状態では甲状腺のヨウ素蓄積量と逸脱量は等しく、ヨウ素濃度は一定となるので、甲状腺へのヨウ素蓄積量を必要量とみなせます。アメリカの18人の成人男女(平均年齢26歳、平均体重78.2kg)を対象とした報告は、甲状腺へのヨウ素蓄積量(平均値±標準偏差)を96.5±39.0µg/日としています。274人の男女(年齢と体重が未記載)を対象としたアメリカの研究では、ヨウ素蓄積量の平均値を91.2µg/日と報告しています。これらの値は日本人にはやや大きいですが、昆布等の食品中のヨウ素の吸収率が100%ではないことを考慮し、91.2µg/日と96.5µg/日の中間値を丸めた95g/日をそのまま男女共通の推定平均必要量としました。上記1番目の研究から個人間変動を推定することは困難ですがが、アメリカ・カナダの食事摂取基準では、変動係数(39.0/96.5=0.40)の半分(0.2)を個人間変動としています。この考え方に従い、成人(男女共通)の推奨量は、個人間の変動係数を20%と見積もり、推定平均必要量に推奨量算定係数1.4を乗じた値を丸めて130µg/日とされました。

・小児(推定平均必要量、推奨量)

小児については、根拠となるデータがありません。そのため、18〜29歳における男女それぞれの参照体重と当該年齢の参照体重の比の0.75乗と成長因子を用いて、成人の推定平均必要量を外挿した上で、男女の値の平均値をもって推定平均必要量としました。推奨量は個人間の変動係数を20%と見積もり、推定平均必要量に推奨量算定係数1.4を乗じた値とされました。

・妊婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)

新生児の甲状腺内ヨウ素量は50〜100µgで、その代謝回転はほぼ100%/日です。この中間値の75µg/日を妊婦への推定平均必要量の付加量としました。推奨量の付加量は、個人間の変動係数を20%と見積もり、推定平均必要量の付加量に推奨量の算定係数1.4を乗じて110µg/日としました。非妊娠女性の推定平均必要量にこの付加量を加えた170µg/日は5人の妊婦を対象とした試験で得られた出納を維持できる摂取量(約160µg/日)を上回っています。

・授乳婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)

日本人の母乳中ヨウ素濃度は諸外国に比較して高いですが、この母乳中の高ヨウ素濃度は授乳婦の高ヨウ素摂取に起因したもので、高ヨウ素濃度の母乳分泌に対応して授乳婦がヨウ素摂取量を増やす必要はありません。一方、WHOは妊婦と授乳婦に関して、ヨウ素の推奨摂取量を250µg/日としています。以上より、授乳によって失われるヨウ素を補うには後述する0〜5か月児の目安量の100µg/日で十分と考え、推定平均必要量の付加量を100µg/日とされました。そして、推奨量の付加量は、個人間の変動係数を20%と見積もり、推定平均必要量の付加量に推奨量算定係数1.4を乗じて140µg/日とされました。

・乳児(目安量)

日本の母乳中ヨウ素濃度に関して、77〜3,971µg/L(n=39、中央値172µg/L)という報告、及び83〜6,960µg/L(n=33、中央値207µg/L)とする報告があります。これら2報告の中央値の平均値(189µg/L)は、日本人の母乳中ヨウ素濃度の代表値とみなせます。しかし、この値と0〜5か月児の基準哺乳量(0.78L/日)の積である147µg/日はアメリカ・カナダの食事摂取基準における0〜6か月児の目安量(110µg/日)を上回っていて、高すぎると判断されました。そこで、日本の0〜5か月児の目安量はアメリカ・カナダの食事摂取基準における0〜6か月児の目安量と我が国とアメリカの乳児の体格差を考慮して100µg/日とされました。なお、WHOはベルギーで行われた1か月児の出納試験に基づき、乳児の必要量を90µg/日としています。6〜11か月児では、母乳に加えて離乳食からのヨウ素摂取が加わります。しかし、離乳食からのヨウ素摂取量は成人同様に大きく変動していて、一つの値に集約することは困難です。そこで、6〜11か月児に関しては0〜5か月児の目安量(100 µg/日)を体重比の0.75乗を用いて外挿し、男女の値の平均値が目安量とされました。

参照・・厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書

【ヨウ素を多く含む食材】

・昆布
・ひじき
・あおのり
・こむぎ
・あわび
・あさり
・しじみ
・たら
・サバ
・鶏卵     ねど

【ヨウ素を多く含む食材ランキング:野菜・動物性食品外編】※100gあたり

1位:刻み昆布(藻類 こんぶ類) 230000㎍
刻み昆布の他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質4.3g、ナトリウム4300mg、カリウム8200mg、マグネシウム720mg、リン300mg、鉄8.6mg、亜鉛1.1mg、銅0.07mg、マンガン0.34mg、カルシウム940mg、セレン2㎍、クロム33㎍、モリブデン14㎍、ビタミンA5㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE0.3mg、ビタミンK91㎍、ビタミンB1 0.15mg、ビタミンB2 0.33mg、ナイアシン1.2mg、ビタミンB6 0.01mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸17㎍、パントテン酸0.09mg、ビオチン12.1㎍、ビタミンC0mg

2位:ひじき(藻類 ほしひじき 乾) 45000㎍
ひじきの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質7.2g、ナトリウム1800mg、カリウム6400mg、カルシウム1000mg、リン93mg、鉄6.2mg、亜鉛1.0mg、銅0.14mg、マンガン0.82mg、マグネシウム640mg、セレン7㎍、クロム26㎍、モリブデン17㎍、ビタミンA360㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE5.4mg、ビタミンK580㎍、ビタミンB1 0.09mg、ビタミンB2 0.42mg、ナイアシン1.8mg、ビタミンB6 0mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸93㎍、パントテン酸0.30mg、ビオチン17.4㎍、ビタミンC0mg

3位:昆布茶 26000㎍
昆布茶のその他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質7.4g、カリウム580mg、カルシウム88mg、マグネシウム51mg、リン14mg、鉄0.5mg、亜鉛0.3mg、銅0mg、マンガン0.03mg、ナトリウム20000mg、セレン2㎍、クロム13㎍、モリブデン1㎍、ビタミンA3㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE0mg、ビタミンK13㎍、ビタミンB1 0.01mg、ビタミンB2 0.02mg、ナイアシン0.1mg、ビタミンB6 0mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸11㎍、パントテン酸0.01mg、ビオチン0.5㎍、ビタミンC6mg、水溶性食物繊維2.0g、不溶性食物繊維0.8g

4位:わかめ(カットわかめ 乾) 10000㎍、
わかめのその他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質13.6g、カリウム430mg、カルシウム870mg、マグネシウム460mg、リン300mg、鉄6.5mg、亜鉛2.8mg、銅0.13mg、マンガン0.46mg、ナトリウム9300mg、セレン9㎍、クロム19㎍、モリブデン10㎍、ビタミンA190㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE0.5mg、ビタミンK1600㎍、ビタミンB1 0.07mg、ビタミンB2 0.08mg、ナイアシン0.3mg、ビタミンB6 0.01mg、ビタミンB12 2.0㎍、葉酸18㎍、パントテン酸0.06mg、ビオチン24.9㎍、ビタミンC0mg

5位:あおのり(藻類 素干し) 2700㎍
あおのりのその他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質21.0g、カリウム2500mg、カルシウム750mg、マグネシウム1400mg、リン390mg、鉄77.0mg、亜鉛1.6mg、銅0.58mg、マンガン13.00mg、ナトリウム3200mg、セレン7㎍、クロム39㎍、モリブデン18㎍、ビタミンA1700㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE2.5mg、ビタミンK3㎍、ビタミンB1 0.92mg、ビタミンB2 1.66mg、ナイアシン6.3mg、ビタミンB6 0.50mg、ビタミンB12 32.1㎍、葉酸270㎍、パントテン酸0.57mg、ビオチン71.0㎍、ビタミンC62mg

6位:あおさ(藻類 素干し) 2200㎍
あおさのその他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質16.5g、カリウム3200mg、カルシウム490mg、マグネシウム3200mg、リン160mg、鉄5.3mg、亜鉛1.2mg、銅0.80mg、マンガン17.00mg、ナトリウム3900mg、セレン8㎍、クロム160㎍、モリブデン23㎍、ビタミンA220㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE1.1mg、ビタミンK5㎍、ビタミンB1 0.07mg、ビタミンB2 0.48mg、ナイアシン10.0mg、ビタミンB6 0.09mg、ビタミンB12 1.3㎍、葉酸180㎍、パントテン酸0.44mg、ビオチン30.7㎍、ビタミンC25mg

7位:あまのり(藻類 焼きのり) 2100㎍
あまのりの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質31.2g、ナトリウム530mg、カリウム2400mg、カルシウム280mg、マグネシウム300mg、リン700mg、鉄11.4mg、亜鉛3.6mg、銅0.55mg、マンガン3.72mg、セレン9㎍、クロム6㎍、モリブデン20㎍、ビタミンA2300㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE4.6mg、ビタミンK390㎍、ビタミンB1 0.69mg、ビタミンB2 2.33mg、ナイアシ11.7mg、ビタミンB6 0.59mg、ビタミンB12 57.6㎍、葉酸1900㎍、パントテン酸1.18mg、ビオチン46.9㎍、ビタミンC210mg

8位:小麦粉(穀類 こむぎ プレミックス粉 お好み焼き用) 1400㎍
お好み焼き用小麦粉の他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質8.8g、ナトリウム1400mg、カリウム210mg、カルシウム64mg、マグネシウム31mg、リン320mg、鉄1.0mg、亜鉛0.7mg、銅0.13mg、マンガン0.92mg、セレン8㎍、クロム3㎍、モリブデン15㎍、ビタミンA1㎍、ビタミンD0.1㎍、ビタミンE1.1mg、ビタミンK1㎍、ビタミンB1 0.21mg、ビタミンB2 0.03mg、ナイアシ1.5mg、ビタミンB6 0.07mg、ビタミンB12 0.1㎍、葉酸17㎍、パントテン酸0.41mg、ビオチン2.4㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維1.7g、不溶性食物繊維1.1g

9位:とさかのり(藻類 赤とさか 塩蔵 塩抜き) 630㎍
とさかのりの他成分:たんぱく質1.5g、ナトリウム270mg、カリウム37mg、カルシウム70mg、マグネシウム31mg、リン11mg、鉄0.2mg、亜鉛0.2mg、銅0.02mg、マンガン0.10mg、セレン0㎍、クロム0㎍、モリブデン1㎍、ビタミンA1㎍、ビタミンD0.1㎍、ビタミンE0mg、ビタミンK17㎍、ビタミンB1 0mg、ビタミンB2 0.04mg、ナイアシ0mg、ビタミンB6 0mg、ビタミンB12 0.1㎍、葉酸0㎍、パントテン酸0.08mg、ビオチン0.6㎍、ビタミンC0mg

10位:ところてん(藻類 てんぐさ) 240㎍
ところてんの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質0.1g、ナトリウム3mg、カリウム2mg、カルシウム4mg、マグネシウム4mg、リン1mg、鉄0.1mg、亜鉛0mg、銅0.01mg、マンガン0.01mg、セレン0㎍、クロム0㎍、モリブデン1㎍、ビタミンA0㎍、ビタミンD㎍、ビタミンE0mg、ビタミンK10㎍、ビタミンB1 0mg、ビタミンB2 0mg、ナイアシ0mg、ビタミンB6 0mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸0㎍、パントテン酸0mg、ビオチン0㎍、ビタミンC0mg

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