カルシウム:骨・歯を作る大事な成分

【カルシウムとは】

カルシウムは多量ミネラルの1種です。カルシウムは、体重の1〜2%を占め、その99%は骨及び歯に存在していて、残りの約1%は血液や組織液、細胞に含まれています。血液中のカルシウム濃度は、比較的狭い範囲囲(8.5〜10.4mg/dL)に保たれており、濃度が低下すると、副甲状腺ホルモンの分泌が増加し、主に骨からカルシウムが溶け出し、元の濃度に戻
ります。よって、副甲状腺ホルモンが高い状態が続くと、骨からのカルシウムの溶出が大きくなり、骨の粗鬆化を引き起こすこととなります。骨は、吸収(骨からのカルシウムなどの溶出)と形成(骨へのカルシウムなどの沈着)を常に繰り返していて、成長期には骨形成が骨吸収を上回り、骨量は増加します。カルシウムの吸収は、年齢や妊娠・授乳、その他の食品成分など様々な要因により影響を受けます。ビタミンDは、このカルシウム吸収を促進します。カルシウムの過剰摂取では、高カルシウム血症、高カルシウム尿症、軟組織の石灰化、泌尿器系 結石、前立腺がん、鉄や亜鉛の吸収障害、便秘などが生じる可能性があります。

【カルシウムが不足すると】

カルシウムの欠乏は、骨粗鬆症、高血圧、動脈硬化などを招く可能性があります。

【摂取量目安】

・基本的な考え方

1歳以上については要因加算法を用いて推定平均必要量及び推奨量を設定しました。性別及び年齢区分ごとの参照体重を基にして体内蓄積量、尿中排泄量、経皮的損失量を算出し、これらの合計を見かけの吸収率で除して推定平均必要量とした要因加算法によって求めたカルシウムの推定平均必要量と推奨量としました(下記表参照)。推奨量は、必要量の個人間変動については明らかではないですが、他の多くの栄養素と同様に、個人間の変動係数を10%と見積もり、推定平均必要量に推奨量算定係数1.2を乗じた値としました。乳児では、母乳及び離乳食からの摂取に基づいて目安量が設定されています。

・要因加算法によって求めたカルシウムの推定平均必要量と推奨量

年齢
(歳)
参照体重
(kg)
体内
蓄積量(mg/日)
尿中
排泄量(mg/日)
経皮的
損失量
(mg/日)
(A)+(B)+(C)
(mg/日)
見かけの
吸収率(%)
推定平均
必要量(mg/日)
推奨量(mg/日)
男性
1 ~ 2 11.5 99 37 6 143 40 357 428
3 ~ 5 16.5 114 49 8 171 35 489 587
6 ~ 7 22.2 99 61 10 171 35 487 585
8 ~ 9 28.0 103 73 12 188 35 538 645
10~11 35.6 134 87 15 236 40 590 708
12~14 49.0 242 111 19 372 45 826 991
15~17 59.7 151 129 21 301 45 670 804
18~29 64.5 38 137 23 197 30 658 789
30~49 68.1 0 142 24 166 27 615 738
50~64 68.0 0 142 24 166 27 614 737
65~74 65.0 0 137 23 160 25 641 769
75 以上 59.6 0 129 21 150 25 600 720
女性
1 ~ 2 11.0 96 36 6 138 40 346 415
3 ~ 5 16.1 99 48 8 155 35 444 532
6 ~ 7 21.9 86 61 10 157 35 448 538
8 ~ 9 27.4 135 72 12 219 35 625 750
10~11 36.3 171 89 15 275 45 610 732
12~14 47.5 178 109 18 305 45 677 812
15~17 51.9 89 116 19 224 40 561 673
18~29 50.3 33 113 19 165 30 551 661
30~49 53 0 118 20 138 25 550 660
50~64 53.8 0 119 20 139 25 556 667
65~74 52.1 0 116 19 136 25 543 652
75 以上 48.8 0 111 19 129 25 517 620

・成人・高齢者・小児(推定平均必要量、推奨量)

体内カルシウム蓄積量、尿中排泄量、経皮的損失量と見かけのカルシウム吸収率を用いて推定平均必要量を算定しました。推奨量は個人間の変動係数を10%と見積もり、推定平均必要量に推奨量算定係数 1.2 を乗じた値としました(上記表参照)。

・妊婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)

新生児の身体には約28〜30gのカルシウムが含まれており、この大半は妊娠後期に母体から供給され、蓄積されます。一方、妊娠中は母体の代謝動態が変化し、腸管からのカルシウム吸収率は著しく増加します。日本人を対象とした出納試験でも、カルシウム吸収率(平均±標準偏差)は、非妊娠時23±8%に対し、妊娠後期には見かけ上42±19%に上昇していました。その結果カルシウムは胎児側へ蓄積され、同時に通常より多く母体に取り込まれたカルシウムは、母親の尿中排泄量を著しく増加させることになります。そのため、付加量は必要がないと判断されました。なお、アメリカ・カナダの食事摂取基準も、この考え方を採用しています。ただしカルシウム摂取量が不足している女性(500mg/日未満)では、母体と胎児における骨の需要に対応するために付加が必要である可能性も報告されています。日本人の食事摂取基準でも、推奨量未満の摂取の女性は推奨量を目指すべきであり、非妊娠時に比べると付加することになるともいえます。

・授乳婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)

授乳中は、腸管でのカルシウム吸収率が非妊娠時に比べて軽度に増加し、母親の尿中カルシ
ウム排泄量は減少することによって、通常よりも多く取り込まれたカルシウムが母乳に供給
されます。そのため、付加量は必要がないと判断されました。

・乳児(目安量)

乳児については、母乳から必要なカルシウム量を摂取できるとして、母乳中のカルシウム濃度及び哺乳量から目安量を算出しました。0〜5か月児については、日本人を対象とした報告から母乳中のカルシウム濃度を250mg/Lとし、基準哺乳量(0.78L/日)を乗じると195mg/日となり、丸め処理を行って200mg/日が目安量とされました。なお、乳児用調製粉乳は母乳に近い組成になっていますが、その吸収率は母乳の吸収率約60%に対して、約27〜47%とやや低いと報告されています。 6か月以降の乳児については、母乳と離乳食、双方に由来するカルシウムを考慮する必要があります。6〜11か月の哺乳量(0.53L/日)と母乳中のカルシウム濃度の平均値(250mg/L)から計算される母乳由来の摂取量(131mg/日)に、各月齢における離乳食由来のカルシウム摂取量から得られる6〜11か月の摂取量(128mg/日)を足し合わせたカルシウム摂取量は261mg/日となり、丸め処理を行って250mg/日が目安量とされました。

参照・・厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書

【カルシウムを多く含む食材】

・牛乳
・ナチュラルチーズ
・カタクチイワシ
・しらす干し
・干しエビ
・ごま
・ひじき
・わかめ
・海苔
・おから     など

【カルシウムを多く含む食材ランキング:野菜・動物性食品外編】※100gあたり

1位:バジル 2800mg
バジルの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質17.3g、ナトリウム59mg、カリウム3100mg、マグネシウム760mg、リン330mg、鉄120.0mg、亜鉛3.9mg、銅1.99mg、マンガン10.00mg、ヨウ素42㎍、セレン18㎍、クロム47㎍、モリブデン200㎍、ビタミンA210㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE5.6mg、ビタミンK820㎍、ビタミンB1 0.26mg、ビタミンB2 1.09mg、ナイアシン7.9mg、ビタミンB6 1.75mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸290㎍、パントテン酸2.39mg、ビオチン61.95㎍、ビタミンC1mg

2位:けし(種実類 乾) 1700mg
けしの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質20.2g、ナトリウム4mg、カリウム700mg、マグネシウム350mg、リン820mg、鉄22.6mg、亜鉛5.1mg、銅1.48mg、マンガン6.88mg、ヨウ素0㎍、セレン8㎍、クロム7㎍、モリブデン120㎍、ビタミンA0㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE11.0mg、ビタミンK0㎍、ビタミンB1 1.61mg、ビタミンB2 0.20mg、ナイアシン1.0mg、ビタミンB6 0.45mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸180㎍、パントテン酸0.81mg、ビオチン47.1㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維1.9g、不溶性食物繊維14.6g

3位:こんにゃく(いも及びでん粉類 凍みこんにゃく 乾) 1600mg
こんにゃくの他成分:たんぱく質3.3g、ナトリウム52mg、カリウム950mg、マグネシウム110mg、リン150mg、鉄12.2mg、亜鉛4.4mg、銅0.86mg、マンガン1.22mg、ビタミンA0㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE0.4mg、ビタミンK0㎍、ビタミンB1 0mg、ビタミンB2 0mg、ナイアシン0.3mg、ビタミンB6 0.48mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸61㎍、パントテン酸0mg、ビオチン0㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維0.9g、不溶性食物繊維70.4g

4位:えんどう(塩豆) 1300mg
えんどうの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質18.6g、ナトリウム610mg、カリウム970mg、マグネシウム120mg、リン360mg、鉄5.6mg、亜鉛3.6mg、銅0.57mg、マンガン1.03mg、ビタミンA6㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE3.9mg、ビタミンK16㎍、ビタミンB1 0.20mg、ビタミンB2 0.10mg、ナイアシン2.2mg、ビタミンB6 0.15mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸17㎍、パントテン酸1.25mg、ビオチン0㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維1.1g、不溶性食物繊維16.8g

5位:ごま(種実類 いり) 1200mg
ごまの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質19.1g、ナトリウム2mg、カリウム410mg、マグネシウム360mg、リン560mg、鉄9.9mg、亜鉛5.9mg、銅1.68mg、マンガン2.52mg、ビタミンA1㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE24.1mg、ビタミンK12㎍、ビタミンB1 0.49mg、ビタミンB2 0.23mg、ナイアシン5.3mg、ビタミンB6 0.64mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸150㎍、パントテン酸0.51mg、ビオチン14.8㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維2.5g、不溶性食物繊維10.1g

同率5位:ずいき(干しずいき 乾) 1200mg
ずいきのその他成分:たんぱく質6.6g、ナトリウム6mg、カリウム10000mg、マグネシウム120mg、リン210mg、鉄9.0mg、亜鉛5.4mg、銅0.55mg、マンガン25.00mg、ビタミンA1㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE0.6mg、ビタミンK19㎍、ビタミンB1 0.15mg、ビタミンB2 0.30mg、ナイアシン2.5mg、ビタミンB6 0.07mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸30㎍、パントテン酸2.00mg、ビオチン0㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維4.8g、不溶性食物繊維21.0g

同率5位:ケール青汁 1200mg
ケール青汁のその他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質10.6g、ナトリウム230mg、カリウム2300mg、マグネシウム210mg、リン270mg、鉄2.9mg、亜鉛1.8mg、銅0.17mg、マンガン2.75mg、ヨウ素5㎍、セレン9㎍、クロム12㎍、モリブデン130㎍、ビタミンA860㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE10.5mg、ビタミンB1 0.31mg、ビタミンB2 0.80mg、ビタミンK1500㎍、ナイアシン6.0mg、ビタミンB6 0.75mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸820㎍、パントテン酸1.31mg、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維12.8g、不溶性食物繊維15.2g

8位:ひじき(藻類 ほしひじき 乾) 1000mg
ひじきの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質7.2g、ナトリウム1800mg、カリウム6400mg、マグネシウム640mg、リン93mg、鉄6.2mg、亜鉛1.0mg、銅0.14mg、マンガン0.82mg、ヨウ素45000㎍、セレン7㎍、クロム26㎍、モリブデン17㎍、ビタミンA360㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE5.4mg、ビタミンK580㎍、ビタミンB1 0.09mg、ビタミンB2 0.42mg、ナイアシン1.8mg、ビタミンB6 0mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸93㎍、パントテン酸0.30mg、ビオチン17.4㎍、ビタミンC0mg

9位:刻み昆布(藻類 こんぶ類) 940mg
刻み昆布の他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質4.3g、ナトリウム4300mg、カリウム8200mg、マグネシウム720mg、リン300mg、鉄8.6mg、亜鉛1.1mg、銅0.07mg、マンガン0.34mg、ヨウ素230000㎍、セレン2㎍、クロム33㎍、モリブデン14㎍、ビタミンA5㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE0.3mg、ビタミンK91㎍、ビタミンB1 0.15mg、ビタミンB2 0.33mg、ナイアシン1.2mg、ビタミンB6 0.01mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸17㎍、パントテン酸0.09mg、ビオチン12.1㎍、ビタミンC0mg

10位:まつも(藻類 素干し) 920mg
いわのりの他成分:たんぱく質27.9g、ナトリウム1300mg、カリウム3800mg、マグネシウム700mg、リン530mg、鉄11.1mg、亜鉛5.2mg、銅0.26mg、マンガン1.25mg、ビタミンA2500㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE16.7mg、ビタミンK1100㎍、ビタミンB1 0.48mg、ビタミンB2 1.61mg、ナイアシン5.0mg、ビタミンB6 0.06mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸720㎍、パントテン酸1.24mg、ビオチン0㎍、ビタミンC5mg

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