ナトリウム:暑い時期は特に必須の成分

【ナトリウムとは】

ナトリウムは、多量ミネラルの1種です。細胞外液の主要な陽イオンで、細胞外液量を維持しています。浸透圧、酸・塩基平衡(酸塩基平衡とは,酸性とアルカリ性のバランスを保とうとする仕組みのことです)の調節にも重要な役割を果たしています。食事による主なナトリウムの摂取源は食塩(塩化ナトリウム)か食塩を含有する調味料からであると言われています。ナトリウムの過剰摂取が血圧上昇と関連があることは、多くの研究によって指摘されており、近年ではナトリウムの過剰摂取が問題視され、摂取量の基準が設けられました。特に欧米においては、厳しい減塩を求める声も上がっているとのこと。日本人の食事摂取基準では、摂取量の基準を成人男性9g/日、成人女性7.5g/日とされています。高血圧の治療が必要な場合の摂取量の基準は6g/日 未満とされています。また、食塩摂取とがん(特に胃がん)の関係については多くの報告がされていて塩分の多い食事が胃がん罹患率及び死亡率の可能性が高まるといわれています。食塩摂取量が増えるに従い、胃がんのリスクが高くなるとも報告されています。

【ナトリウムが不足すると】

日本人のナトリウム摂取量は食塩摂取量に依存していて、その摂取レベルは高く、通常の食事をしていれば不足することはありません。ナトリウムを食事摂取基準に含める意味は、むしろ過剰摂取による生活習慣病の発症及び重症化を予防することにあります。

【摂取量目安】

・成人・高齢者(推定平均必要量、推奨量)

古典的研究をレビューした結果として、座位で発汗を伴わない仕事に従事している成人のナトリウム不可避損失量は、便:0.023mg(0.001mmol)/kg体重/日、尿:0.23mg(0.01 mmol)/kg体重/日、皮膚:0.92mg(0.04mmol)/kg 体重/日、合計1.173mg(0.051mmol)/kg体重/日と試算されています。これを18〜29歳の男性に適用すると、75.6(1.173×64.5)mg/日あるいは3.3(0.051×64.5)mmol/日となります。成人のナトリウム不可避損失量は500mg/日以下で、個人間変動(変動係数10%)を考慮に入れても約600mg/日(食塩相当量1.5g/日)です。この考え方を根拠に600mg/日を成人における男女共通の推定平均必要量としました。しかし、実際には通常の食事では日本人の食塩摂取量が1.5g/日を下回ることはありません。ただし、高温環境での労働や運動時の高度発汗では相当量のナトリウムが喪失されることがあります。多量発汗の対処法としての水分補給では、少量の食塩添加が必要とされます。近年の日本の特に夏季の気温の上昇を考慮すると、熱中症対策としても適量の食塩摂取は必要であると考えられます。ただし、必要以上の摂取は後述する生活習慣病の発症予防、改善、重症化予防に好ましくないので注意が必要です。

・小児(推定平均必要量、推奨量)

小児については、報告がないため設定されていません。

・妊婦・授乳婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)

妊娠による母体の組織増加、胎児、胎盤を維持するために必要なナトリウム量は約21.85g(950mmol)と推定されます。この増加は9か月の間に起こるのでナトリウム付加量は0.08g(3.5mmol)/日(食塩相当量0.2g/日)に相当します。この量は通常の食事で十分補えるので、妊婦にナトリウムを付加する必要はありません。また、最近の日本人の人乳組成の報告によると、母乳中のナトリウム濃度の平均値は135mg/Lでした。泌乳量を0.78L/日とすると、105mg/日(食塩相当量0.27g/日)のナトリウムが含まれていることになります。この量は通常の食事で十分補えるので、授乳婦についても特にナトリウムを付加する必要はありません。

・乳児(目安量)

0〜5か月児の目安量の算定において、母乳中ナトリウム濃度の平均値として135mg/Lを採用し、基準哺乳量(0.78L/日)を乗じると、1日当たりのナトリウム摂取量は105mg/日(4.6mmol/日、食塩相当量0.27g/日)となります。これを根拠に、目安量を105mg/日(食塩相当量0.27g/日)、丸め処理を行って100mg/日(食塩相当量0.3g/日)とされました。
6〜11か月児では、母乳中のナトリウム濃度の平均値(135mg/L)、6〜11か月の哺乳量(0.53L/日)、離乳食の全国実態調査データから推定すると、母乳及び離乳食からのナトリウム摂取量は、それぞれ72mg/日(135mg/L×0.53 L/日)、487mg/日となります。これらを合計した値(559mg/日)より、目安量は600mg/日(食塩相当量1.5 g/日)されました。

参照・・厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書

【ナトリウムを多く含む食材】

・食塩
・味噌
・醤油
・めんつゆ
・ハム
・ベーコン
・昆布茶
・かまぼこ
・梅干し
・わかめ     など

【ナトリウムを多く含む食材ランキング:野菜・動物性食品外編】※100gあたり

1位:昆布茶 20000mg
昆布茶のその他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質7.4g、カリウム580mg、カルシウム88mg、マグネシウム51mg、リン14mg、鉄0.5mg、亜鉛0.3mg、銅0mg、マンガン0.03mg、ヨウ素26000㎍、セレン2㎍、クロム13㎍、モリブデン1㎍、ビタミンA3㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE0mg、ビタミンK13㎍、ビタミンB1 0.01mg、ビタミンB2 0.02mg、ナイアシン0.1mg、ビタミンB6 0mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸11㎍、パントテン酸0.01mg、ビオチン0.5㎍、ビタミンC6mg、水溶性食物繊維2.0g、不溶性食物繊維0.8g

2位:わかめ(カットわかめ 乾) 9300mg
わかめのその他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質13.6g、カリウム430mg、カルシウム870mg、マグネシウム460mg、リン300mg、鉄6.5mg、亜鉛2.8mg、銅0.13mg、マンガン0.46mg、ヨウ素10000㎍、セレン9㎍、クロム19㎍、モリブデン10㎍、ビタミンA190㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE0.5mg、ビタミンK1600㎍、ビタミンB1 0.07mg、ビタミンB2 0.08mg、ナイアシン0.3mg、ビタミンB6 0.01mg、ビタミンB12 2.0㎍、葉酸18㎍、パントテン酸0.06mg、ビオチン24.9㎍、ビタミンC0mg

3位:うめ(梅漬/塩漬) 7600mg
うめのその他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質0.4g、カリウム150mg、カルシウム47mg、マグネシウム32mg、リン15mg、鉄2.9mg、亜鉛0.1mg、銅0.11mg、マンガン0.21mg、ビタミンA1㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE3.7mg、ビタミンK0㎍、ビタミンB1 0.02mg、ビタミンB2 0.04mg、ナイアシン0.3mg、ビタミンB6 0.06mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸1㎍、パントテン酸0.20mg、ビオチン0㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維1.1g、不溶性食物繊維1.6g

4位:塩昆布(藻類 こんぶ類) 7100mg
塩昆布のその他成分:たんぱく質16.9g、カリウム1800mg、カルシウム280mg、マグネシウム190mg、リン170mg、鉄4.2mg、亜鉛0.7mg、銅0.04mg、マンガン0.56mg、ビタミンA33㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE0.6mg、ビタミンK74㎍、ビタミンB1 0.04mg、ビタミンB2 0.23mg、ナイアシン0.8mg、ビタミンB6 0.07mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸19㎍、パントテン酸0.33mg、ビオチン0㎍、ビタミンC0mg

5位:だいこん漬物(みそ漬) 4400mg
だいこん漬物のその他成分:たんぱく質4.5g、カリウム280mg、カルシウム52mg、マグネシウム22mg、リン77mg、鉄1.7mg、亜鉛0.3mg、銅0.08mg、マンガン0.28mg、ビタミンA0㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE0mg、ビタミンK0㎍、ビタミンB1 0.06mg、ビタミンB2 0.08mg、ナイアシン0.3mg、ビタミンB6 0.06mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸12㎍、パントテン酸0.20mg、ビオチン0㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維0.8g、不溶性食物繊維2.5g

6位:あおさ(藻類 素干し) 3900mg
あおさのその他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質16.5g、カリウム3200mg、カルシウム490mg、マグネシウム3200mg、リン160mg、鉄5.3mg、亜鉛1.2mg、銅0.80mg、マンガン17.00mg、ヨウ素2200㎍、セレン8㎍、クロム160㎍、モリブデン23㎍、ビタミンA220㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE1.1mg、ビタミンK5㎍、ビタミンB1 0.07mg、ビタミンB2 0.48mg、ナイアシン10.0mg、ビタミンB6 0.09mg、ビタミンB12 1.3㎍、葉酸180㎍、パントテン酸0.44mg、ビオチン30.7㎍、ビタミンC25mg

7位:小麦粉(こむぎ プレミックス粉) 3800mg
小麦粉のその他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質9.1g、カリウム280mg、カルシウム110mg、マグネシウム39mg、リン130mg、鉄1.2mg、亜鉛0.7mg、銅0.10mg、マンガン0.96mg、ヨウ素1㎍、セレン6㎍、クロム6㎍、モリブデン23㎍、ビタミンA5㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE0.6mg、ビタミンK2㎍、ビタミンB1 0.15mg、ビタミンB2 0.07mg、ナイアシン2.8mg、ビタミンB6 0.12mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸26㎍、パントテン酸0.33mg、ビオチン4.3㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維1.4g、不溶性食物繊維1.2g

8位:あおのり(藻類 素干し) 3200mg
あおのりのその他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質21.0g、カリウム2500mg、カルシウム750mg、マグネシウム1400mg、リン390mg、鉄77.0mg、亜鉛1.6mg、銅0.58mg、マンガン13.00mg、ヨウ素2700㎍、セレン7㎍、クロム39㎍、モリブデン18㎍、ビタミンA1700㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE2.5mg、ビタミンK3㎍、ビタミンB1 0.92mg、ビタミンB2 1.66mg、ナイアシン6.3mg、ビタミンB6 0.50mg、ビタミンB12 32.1㎍、葉酸270㎍、パントテン酸0.57mg、ビオチン71.0㎍、ビタミンC62mg

9位:くきわかめ(藻類 わかめ湯通し塩蔵 塩抜き) 3100mg
くきわかめのその他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質0.8g、カリウム88mg、カルシウム86mg、マグネシウム70mg、リン34mg、鉄0.4mg、亜鉛0.1mg、銅0.02mg、マンガン0.04mg、ビタミンA5㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE0mg、ビタミンK33㎍、ビタミンB1 0.02mg、ビタミンB2 0.02mg、ナイアシン0.1mg、ビタミンB6 0mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸2㎍、パントテン酸0.07mg、ビオチン0㎍、ビタミンC0mg

10位:がごめこんぶ(藻類 素干し) 3000mg
がごめこんぶのその他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質6.3g、カリウム5700mg、カルシウム750mg、マグネシウム660mg、リン320mg、鉄3.3mg、亜鉛0.8mg、銅0.03mg、マンガン0.22mg、ビタミンA98㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE0.6mg、ビタミンK170㎍、ビタミンB1 0.21mg、ビタミンB2 0.32mg、ナイアシン1.5mg、ビタミンB6 0.03mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸42㎍、パントテン酸0.13mg、ビオチン0㎍、ビタミンC0mg
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