リン:エネルギーを作り出す役割

【リンとは】

リンは多量ミネラルの1種です。リンは、有機リンと無機リンに大別でき、成人の生体内には最大850gのリンが存在し、その85%が骨組織に、14%が軟組織や細胞膜に、1%が細胞外液に存在すると言われています。リンは、カルシウムと共に骨格を形成するだけでなく、ATP(※1)の形成、その他の核酸や細胞膜リン脂質の合成、細胞内リン酸化を必要とするエネルギー代謝などに必須の成分です。血清中のリン濃度の基準範囲は、2.5〜4.5mg/dL(0.8〜1.45mmol/L)と、カルシウムに比べて広く、食事からのリン摂取量の増減がそのまま血清リン濃度と尿中リン排泄量に影響します。血清リン濃度と尿中リン排泄量は、副甲状腺ホルモン、線維芽細胞増殖因子23、活性型ビタミンDによって主に調節されています。

(※1)ATPとは・・・すべての植物、動物および微生物の細胞内に存在するエネルギー分子です。ATPは、細胞の増殖、筋肉の収縮、植物の光合成、菌類の呼吸および酵母菌の発酵などの代謝過程にエネルギーを供給するためにすべての生物が使用する化合物です。

【リンが不足すると】

リンは多くの食品に含まれており、通常の食事では不足や欠乏することはありません。一方、食品添加物として多くのリンが用いられており、国民健康・栄養調査などの報告値よりも多くのリンを摂取していることも考えられます。慢性腎臓病ではリン摂取の制限も考慮されています。したが って、不足や欠乏の予防よりも、過剰摂取の回避が重要といえるでしょう。

【摂取量目安】

・成人・高齢者・小児(目安量)

平成 28 年国民健康・栄養調査によると、リンの摂取量の中央値は 957 mg/日です。ただし、この調査には加工食品に添加されているリンの量は加算されていないために、実際の摂取量はこの値より多いことも考えられます。18〜28歳の日本人女性を対象とした出納試験によると、リンの平衡維持に必要な摂取量は、18.7mg/kg体重/日でした。この値を基に、性別及び年齢区分ごとの参照体重を乗じて推定平均必要量を求めると、18〜29歳の女性では946mg/日となり、ほぼ現在の摂取量に近い値となります。年齢(平均±標準偏差)が 68±6歳の高齢女性を対象に陰膳法によって実測を行った結果では、リン摂取量(平均±標準偏差)は1,019±267mg/日と報告されていて、国民健康・栄養調査とほぼ同程度の値でした。以上から、1歳以上については、アメリカ・カナダの食事摂取基準を参考に、摂取量の中央値を目安量としましたただし、18歳以上については、男女別に各年齢区分の摂取量の中央値の中で最も少ない摂取量をもって、それぞれの18歳以上全体の目安量としました。

・乳児(目安量)

日本人の母乳中リン濃度の平均値は150mg/Lであると報告されていて、この値に基準哺乳量(0.78L/日)を乗じて得られる117mg/日に、丸め処理を行って120mg/日を0〜5か月児の目安量としました。6〜11か月児について、母乳中のリン濃度と6〜11か月の哺乳量(0.53L/日)から計算される母乳由来のリン摂取量(80mg/日)と、離乳食由来のリン摂取量(183mg/日)を足し合わせ、丸め処理を行って260mg/日を目安量としました。

・妊婦(目安量)

出生時の総リン量は17.1gとの報告があります。これを非妊娠時の摂取に加えて摂取すべき量と考えると、1日当たり61mg/日となります。一方、妊娠時のリンの吸収率は70%、非妊娠時は60〜65%との報告があります。そこで、18〜29歳の目安量(800mg/日)に吸収率(70%、60%)を乗じると、リン吸収量はそれぞれ560mg/日、480mg/日となります。この差(80mg/日)は上記の61mg/日を上回っているため、非妊娠時の摂取量に加えてリンを多く摂取する必要はないと判断できます。国民健康・栄養調査では、妊婦のリン摂取量の中央値は865mg/日です。一方、上述のように、妊娠可能な年齢における非妊娠女性の目安量は800mg/日と算定されていて、妊娠によって必要量が異なることを示唆する報告は見いだせませんでした。これらを考慮し、目安量は800mg/日とされました。

・授乳婦(目安量)

授乳婦の血清リン濃度は、母乳への損失があるにもかかわらず高値で、授乳婦ではリンの骨吸収量の増加と尿中排泄量の減少が観察されていることから、非授乳時の摂取量に加えてリンを摂取する必要はないと判断できます。の国民健康・栄養調査では、授乳婦のリン摂取量の中央値は911mg/日です。

・授乳婦(目安量)
非授乳時の摂取量に加えてリンを摂取する必要はないと判断できます。の国民健康・栄養調査では、授乳婦のリン摂取量の中央値は911mg/日です。一方、上述のように授乳可能な年齢における非授乳婦の目安量は800mg/日と算定されています。これらを考慮し、授乳婦の目安量は800mg/日とされました。

 

【リンを多く含む食材】

・干しエビ
・カタクチイワシ
・真あじ(骨付き)
・ししゃも
・しらす干し
・かつお節
・卵黄
・チーズ
・大豆
・きな粉     など

【リンを多く含む食材ランキング:野菜・動物性食品外編】※100gあたり

1位:米ぬか(穀類 こめ) 2000mg
米ぬかの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質10.7g、ナトリウム7mg、カリウム1500mg、カルシウム35mg、マグネシウム850mg、鉄7.6mg、亜鉛5.9mg、銅0.48mg、マンガン14.97mg、ヨウ素3㎍、セレン5㎍、クロム5㎍、モリブデン65㎍、ビタミンA0㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE12.2mg、ビタミンK0㎍、ビタミンB1 3.12mg、ビタミンB2 0.21mg、ナイアシン34.6mg、ビタミンB6 3.27mg、ビタミンB12 3.12㎍、葉酸180㎍、パントテン酸4.43mg、ビオチン38.2㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維2.2g、不溶性食物繊維18.3g

2位:小麦はいが(穀類 こむぎ) 1100mg
小麦はいがの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質25.9g、ナトリウム3mg、カリウム1100mg、カルシウム42mg、マグネシウム310mg、鉄9.4mg、亜鉛15.9mg、銅0.89mg、マンガン0mg、ビタミンA5㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE39.1mg、ビタミンK2㎍、ビタミンB1 1.82mg、ビタミンB2 0.71mg、ナイアシン9.9mg、ビタミンB6 1.24mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸390㎍、パントテン酸1.34mg、ビオチン0㎍、ビタミンC1.84mg、水溶性食物繊維0.7g、不溶性食物繊維13.6g

同率2位:あさ(種実類 乾) 1100mg
あさの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質25.1g、ナトリウム2mg、カリウム340mg、カルシウム130mg、マグネシウム400mg、鉄13.3mg、亜鉛6.1mg、銅1.32mg、マンガン9.97mg、ヨウ素0㎍、セレン4㎍、クロム9㎍、モリブデン45㎍、ビタミンA2㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE25.0mg、ビタミンK51㎍、ビタミンB1 0.35mg、ビタミンB2 0.19mg、ナイアシン2.3mg、ビタミンB6 0.40mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸82㎍、パントテン酸0.57mg、ビオチン27.7㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維1.2g、不溶性食物繊維21.8g

4位:ごま(種実類 むき) 870mg
ごまの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質18.6g、ナトリウム2mg、カリウム400mg、カルシウム62mg、マグネシウム340mg、鉄6.0mg、亜鉛5.5mg、銅1.53mg、マンガン1.23mg、ヨウ素1㎍、セレン43㎍、クロム1㎍、モリブデン120㎍、ビタミンA0㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE32.5mg、ビタミンK1㎍、ビタミンB1 1.25mg、ビタミンB2 0.14mg、ナイアシン5.3mg、ビタミンB6 0.44mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸83㎍、パントテン酸0.39mg、ビオチン10.6㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維0.6g、不溶性食物繊維12.4g

5位:だいず(豆類 分離大豆たんぱく 塩分調整タイプ) 840mg
だいずの他成分:たんぱく質79.1g、ナトリウム640mg、カリウム260mg、カルシウム890mg、マグネシウム58mg、鉄9.4mg、亜鉛2.9mg、銅1.51mg、マンガン0.89mg、ビタミンA0㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE0.5mg、ビタミンK0㎍、ビタミンB1 0.11mg、ビタミンB2 0.14mg、ナイアシン0.4mg、ビタミンB6 0.06mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸270㎍、パントテン酸0.37mg、ビオチン0㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維0g、不溶性食物繊維4.2g

6位:パン酵母(酵母 乾燥) 840mg
パン酵母の他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質30.2g、ナトリウム120mg、カリウム1600mg、カルシウム19mg、マグネシウム91mg、鉄13.1mg、亜鉛3.4mg、銅0.20mg、マンガン0.40mg、ヨウ素1㎍、セレン2㎍、クロム2㎍、モリブデン1㎍、ビタミンA0㎍、ビタミンD2.8㎍、ビタミンE0mg、ビタミンK0㎍、ビタミンB1 8.81mg、ビタミンB2 3.72mg、ナイアシン22.0mg、ビタミンB6 1.28mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸3800㎍、パントテン酸5.73mg、ビオチン309.7㎍、ビタミンC1mg、水溶性食物繊維2.5g、不溶性食物繊維30.1g

7位:ひまわりの種(フライ、味付け) 830mg
ひまわりの種の他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質18.7g、ナトリウム250mg、カリウム750mg、カルシウム81mg、マグネシウム390mg、鉄3.6mg、亜鉛5.0mg、銅1.81mg、マンガン2.33mg、ヨウ素0㎍、セレン95㎍、クロム1㎍、モリブデン28㎍、ビタミンA1㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE14.0mg、ビタミンK0㎍、ビタミンB1 1.72mg、ビタミンB2 0.25mg、ナイアシン6.7mg、ビタミンB6 1.18mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸280㎍、パントテン酸1.66mg、ビオチン80.1㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維0.8g、不溶性食物繊維6.1g

8位:チアシード(種実類 乾) 820mg
チアシードの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質18.2g、ナトリウム0mg、カリウム760mg、カルシウム570mg、マグネシウム360mg、鉄7.6mg、亜鉛5.9mg、銅1.79mg、マンガン4.80mg、ヨウ素0㎍、セレン11㎍、クロム8㎍、モリブデン44㎍、ビタミンA0㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE14.6mg、ビタミンK1㎍、ビタミンB1 0.97mg、ビタミンB2 0.25mg、ナイアシン9.8mg、ビタミンB6 0.42mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸84㎍、パントテン酸0.53mg、ビオチン23.7㎍、ビタミンC1mg、水溶性食物繊維5.7g、不溶性食物繊維31.2g

同率8位:けし(種実類 乾) 820mg
けしの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質20.2g、ナトリウム4mg、カリウム700mg、カルシウム1700mg、マグネシウム350mg、リン820mg、鉄22.6mg、亜鉛5.1mg、銅1.48mg、マンガン6.88mg、ヨウ素0㎍、セレン8㎍、クロム7㎍、モリブデン120㎍、ビタミンA0㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE11.0mg、ビタミンK0㎍、ビタミンB1 1.61mg、ビタミンB2 0.20mg、ナイアシン1.0mg、ビタミンB6 0.45mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸180㎍、パントテン酸0.81mg、ビオチン47.1㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維1.9g、不溶性食物繊維14.6g

10位:あまのり(藻類 味付けのり) 710mg
あまのりの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質30.8g、ナトリウム1700mg、カリウム2700mg、カルシウム170mg、マグネシウム290mg、鉄8.2mg、亜鉛3.7mg、銅0.59mg、マンガン2.35mg、ビタミンA2700㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE3.7mg、ビタミンK650㎍、ビタミンB1 0.61mg、ビタミンB2 2.31mg、ナイアシン12.2mg、ビタミンB6 0.51mg、ビタミンB12 58.1㎍、葉酸1600㎍、パントテン酸1.28mg、ビオチン0㎍、ビタミンC200mg

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