セレン:髪や爪などたんぱく質の一部を構成する

【セレンとは】

レンは微量ミネラルの1種です。セレンは、セレノシステイン残基を有するたんぱく質として生理機能を発現し、抗酸化システムや甲状腺ホルモン代謝において重要な成分です。慢性セレン中毒で最も高頻度の症状は、毛髪と爪の脆弱化・脱落です。食品のセレン濃度が高い中国湖北省恩施地域においては、脱毛や爪の形態変化を伴うセレン中毒が認められました。その他の症状には、胃腸障害、皮疹、呼気にんにく臭、神経系異常があります。誤飲などでグラム単位のセレンを摂取した場合の急性中毒症状は、重症の胃腸障害、神経障害、呼吸不全症候群、心筋梗塞、腎不全などです。

【セレンが欠乏すると】

セレン欠乏症は、心筋障害を起こす克山病、カシン・ベック病などに関与しています。また、完全静脈栄養中に、血漿セレン濃度の著しい低下(9 µg/L)、下肢筋肉痛、皮膚の乾燥・薄片状などを生じた症例、心筋障害を起こして死亡した症例などが報告され、セレン欠乏症と判断されました。類似症例は、日本でも報告されています。

【摂取量目安】

・成人(推定平均必要量、推奨量)

WHOは、中国のデータに基づいて、血漿グルタチオンペルオキシダーゼ活性値とセレン摂取量との間に回帰式(Y=2.19X+13.8)を作成しました。Yは血漿グルタチオンペルオキシダーゼ活性値の飽和値を100としたときの相対値、Xはセレン摂取量(µg/日)です。この式から、Y=66.7すなわち活性値が飽和値の2/3となるときのセレン摂取量は、24.2µg/日〔(66.7-13.8)/2.19〕となります。この値を参照値と考え、性別及び年齢区分ごとの推定平均必要量を中国の対象者の平均体重を60kgと推定し、体重比の0.75乗を用いて外挿されました。推奨量は、個人間の変動係数を10%と見積もり、推定平均必要量に推奨量算定係数1.2を乗じた値とされました。

・小児(推定平均必要量、推奨量)

小児の推定平均必要量の根拠となるデータは不十分です。そこで、小児の性別及び年齢区分ごとの推定平均必要量は、成人の推定平均必要量の参照値(24.2µg/日)の基になった推定体重(60kg)と小児の性別及び年齢区分ごとの参照体重に基づき、体重比の0.75乗と成長因子を用いて、24.2µg/日から外挿して算定されました。推奨量は、個人間の変動係数を10% と見積もり、推定平均必要量に推奨量算定係数1.2を乗じた値とされました。

・妊婦・授乳婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)

セレンの栄養状態が適切であれば、体重1kg当たりのセレン含有量は約250µgと推定されています。最近の日本の出生時体重の平均値である約3kgの胎児を出産する妊婦の場合、胎盤(胎児の約6分の1の重量)を合わせた約3.5kgに対して必要なセレンは約900µgとなります。さらに、セレンは血液中にも170〜198µg/L(平均184µg/L)含まれていて、妊娠中に生じる血液体積の30〜50%の増加についても考慮する必要があります。体重当たりの血液量を0.075L/kgとすると、18〜29歳女性の参照体重50.3kgの女性で1.1〜1.9Lの血液増加になるので、これに血液中セレン濃度を乗じると血液増加に伴って必要となるセレンは約 300µgとなります。したがって、両者を合わせた約1,200µgが妊娠に伴って必要なセレン量となる。食事中セレンの吸収率を90%、妊娠期間280日として1日当たりの量(1,200/0.9/280)を算定し、得られた4.76µg/日を丸めた5µg/日が妊婦における推定平均必要量の付加量とされました。また、推奨量の付加量は、個人間の変動係数を10%と見積もり、推定平均必要量の付加量に推奨量算定係数1.2を乗じた値(5.71µg/日)を丸めた5µg/日とされました。日本人の母乳中セレン濃度に関する研究は、互いに近似した値を報告しています。これらの中で、4,000人以上を対象とした報告の平均値(17µg/L)を日本人の母乳中セレン濃度の代表値としました。この値と基準哺乳量(0.78L/日)、食品中セレンの吸収率(90%)に基づき得られた14.7µg/日(17×0.78/0.90)を丸めた15µg/日が授乳婦における推定平均必要量の付加量とされました。推奨量の付加量は、個人間の変動係数を10%と見積もり、推定平均必要量の付加量に推奨量算定係数1.2を乗じて得られる17.7µg/日を丸めた20µg/日とされました。

・乳児(目安量)

0〜5か月児の目安量は、母乳中のセレン濃度(17µg/L)に基準哺乳量(0.78L/日)を乗じて得られる13.3µg/日を丸めた15µg/日とされました。6〜11か月児に関して、0〜5か月児の目安量(13.3µg/日)を体重比の0.75乗を用いて外挿し、男女の値を平均すると17.0µg/日となります。一方、成人の推定平均必要量の参照値を体重比の0.75乗と成長因子を用いて6〜11か月児に外挿し、男女の値を平均すると15.0µg/日となります。6〜11か月児の目安量は、これら二つの値の平均値(16.0µg/日)を丸めた15µg/日とされました。

参照・・厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書

【セレンを多く含む食材】

・かつお節
・あん肝
・すけとうだら
・トビウオ
・真ガレイ
・ズワイガニ
・豚レバー
・牛レバー
・ねぎ
・チョコレート

【セレンを多く含む食材ランキング:野菜・動物性食品外編】※100gあたり

1位:まつたけ(きのこ類 生) 82㎍
まつたけの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質1.1g、ナトリウム2mg、カリウム410mg、カルシウム6mg、マグネシウム8mg、リン40mg、鉄1.3mg、亜鉛0.8mg、銅0.24mg、マンガン0.12mg、ヨウ素3㎍、クロム14㎍、モリブデン1㎍、ビタミンA0㎍、ビタミン0.6㎍、ビタミンE0mg、ビタミンK0㎍、ビタミンB1 0.10mg、ビタミンB2 0.10mg、ナイアシ8.0mg、ビタミンB6 0.15mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸63㎍、パントテン酸1.91mg、ビオチン18.4㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維0.3g、不溶性食物繊維4.4g

2位:玄穀(穀類 こむぎ) 54㎍
玄穀の他成分:たんぱく質13.0g、ナトリウム2mg、カリウム340mg、カルシウム26mg、マグネシウム140mg、リン320mg、鉄3.2mg、亜鉛3.1mg、銅0.43mg、マンガン4.09mg、ヨウ素0㎍、クロム1㎍、モリブデン47㎍、ビタミンA0㎍、ビタミン0㎍、ビタミンE1.8mg、ビタミンK0㎍、ビタミンB1 0.35mg、ビタミンB2 0.09mg、ナイアシ5.8mg、ビタミンB6 0.34mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸49㎍、パントテン酸1.29mg、ビオチン10.7㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維1.5g、不溶性食物繊維9.9g

3位:レンズまめ(豆類 全粒 乾) 54㎍
レンズまめの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質19.7g、ナトリウム0mg、カリウム1000mg、カルシウム57mg、マグネシウム100mg、リン430mg、鉄9.0mg、亜鉛4.8mg、銅0.95mg、マンガン1.57mg、ヨウ素0㎍、クロム2㎍、モリブデン180㎍、ビタミンA3㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE6.1mg、ビタミンK17㎍、ビタミンB1 0.52mg、ビタミンB2 0.17mg、ナイアシ2.5mg、ビタミンB6 0.55mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸77㎍、パントテン酸1.58mg、ビオチン22.7㎍、ビタミンC1mg、水溶性食物繊維1.0g、不溶性食物繊維15.7g

4位:強力粉(穀類 こむぎ 2等) 49㎍
強力粉の他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質11.6g、ナトリウム0mg、カリウム86mg、カルシウム21mg、マグネシウム36mg、リン86mg、鉄1.0mg、亜鉛1.0mg、銅0.19mg、マンガン0.58mg、ヨウ素0㎍、クロム1㎍、モリブデン30㎍、ビタミンA0㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE0.7mg、ビタミンK0㎍、ビタミンB1 0.13mg、ビタミンB2 0.04mg、ナイアシ1.1mg、ビタミンB6 0.08mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸18㎍、パントテン酸0.93mg、ビオチン2.6㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維0.9g、不溶性食物繊維1.2g

5位:ごま(種実類 むき) 43㎍
ごまの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質18.6g、ナトリウム2mg、カリウム400mg、カルシウム62mg、マグネシウム340mg、リン870mg、鉄6.0mg、亜鉛5.5mg、銅1.53mg、マンガン1.23mg、ヨウ素1㎍、クロム1㎍、モリブデン120㎍、ビタミンA0㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE32.5mg、ビタミンK1㎍、ビタミンB1 1.25mg、ビタミンB2 0.14mg、ナイアシ5.3mg、ビタミンB6 0.44mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸83㎍、パントテン酸0.39mg、ビオチン10.6㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維0.6g、不溶性食物繊維12.4g

6位:糸引き納豆(豆類 だいず) 16㎍
糸引き納豆の他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質14.2g、ナトリウム2mg、カリウム660mg、カルシウム90mg、マグネシウム100mg、リン190mg、鉄3.3mg、亜鉛1.9mg、銅0.61mg、マンガン0mg、ヨウ素0㎍、クロム1㎍、モリブデン290㎍、ビタミンA0㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE9.9mg、ビタミンK600㎍、ビタミンB1 0.07mg、ビタミンB2 0.56mg、ナイアシ1.1mg、ビタミンB6 0.24mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸120㎍、パントテン酸3.60mg、ビオチン18.2㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維2.3g、不溶性食物繊維4.4g

同率6位:ドライトマト(トマト) 16㎍
ドライトマトの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質9.1g、ナトリウム120mg、カリウム3200mg、カルシウム10mg、マグネシウム180mg、リン300mg、鉄4.2mg、亜鉛1.9mg、銅0.82mg、マンガン1.22mg、ヨウ素4㎍、クロム11㎍、モリブデン29㎍、ビタミンA220㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE20.6mg、ビタミンK13㎍、ビタミンB1 0.68mg、ビタミンB2 0.30mg、ナイアシ12.9mg、ビタミンB6 0.95mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸120㎍、パントテン酸1.08mg、ビオチン42.7㎍、ビタミンC15mg、水溶性食物繊維6.4g、不溶性食物繊維15.3g

8位:マッシュルーム(きのこ類 生) 14㎍
マッシュルームの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質1.7g、ナトリウム6mg、カリウム350mg、カルシウム3mg、マグネシウム10mg、リン100mg、鉄0.3mg、亜鉛0.4mg、銅0.32mg、マンガン0.04mg、ヨウ素1㎍、クロム0㎍、モリブデン2㎍、ビタミンA0㎍、ビタミンD0.3㎍、ビタミンE20.6mg、ビタミンK0㎍、ビタミンB1 0.06mg、ビタミンB2 0.29mg、ナイアシ3.0mg、ビタミンB6 0.11mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸28㎍、パントテン酸1.54mg、ビオチン10.6㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維0.2g、不溶性食物繊維1.8g

同率8位:まいたけ(乾) 14㎍
まいたけのその他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質12.8g、ナトリウム3mg、カリウム2500mg、カルシウム2mg、マグネシウム100mg、リン700mg、鉄2.6mg、銅1.78mg、マンガン0.47mg、ヨウ素1㎍、亜鉛6.9mg、クロム2㎍、モリブデン9㎍、ビタミンA0㎍、ビタミンE0mg、ビタミンD19.8㎍、ビタミンK0㎍、ビタミンB1 1.24mg、ビタミンB2 1.89mg、ナイアシン64.1mg、ビタミンB6 0.28mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸220㎍、パントテン酸3.67mg、ビオチン242.6㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維1.5g、不溶性食物繊維39.4g

10位:青えんどう(豆類 えんどう 全粒 青えんどう) 11㎍
青えんどうの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質17.4g、ナトリウム1mg、カリウム870mg、カルシウム65mg、マグネシウム120mg、リン360mg、鉄5.0mg、亜鉛4.1mg、銅0.49mg、マンガン0mg、ヨウ素1㎍、クロム2㎍、モリブデン280㎍、ビタミンA8㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE7.0mg、ビタミンK16㎍、ビタミンB1 0.72mg、ビタミンB2 0.15mg、ナイアシ2.5mg、ビタミンB6 0.29mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸24㎍、パントテン酸1.74mg、ビオチン16.0㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維1.2g、不溶性食物繊維16.2g

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