モリブデン:尿酸の代謝に関与する成分

【モリブデンとは】
モリブデンは微量ミネラルの1種です。モリブデンは、キサンチンオキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、亜硫酸オ(モリブデン補欠因子)として機能しています。先天的にモリブデン補欠因子、又は亜硫酸オ キシダーゼを欠損すると、亜硫酸の蓄積により脳の萎縮と機能障害、痙攣、水晶体異常などが生じ、多くは新生児期に死に至ると言われています。モリブデンは穀類や豆類に多く含まれることから、穀物や豆類の摂取が多い日本人のモリブデン摂取量は欧米人よりも多いと言われています。穀物と豆類の摂取が多い厳格な日本の菜食主義者の献立を分析した研究では、モリブデン摂取量の平均値を540µg/日と報告していますが、健康障害は認められていません。慢性腎臓病の小児や、人工透析を受けている患者において、血清モリブデン濃度が上昇しているという報告があります。モリブデンの主排泄経路が尿であること、モリブデンがリン酸と高い親和性を有すること、腎機能が低下するとしばしば血清リン濃度が上昇することを考慮すると、この血清モリブデン濃度の上昇は血清リン濃度の上昇に伴う二次的なものである可能性が高く、慢性腎臓病の発症や重症化とは無関係と思われます。その他の生活習慣病の重症化とモリブデンの直接的な関連を示す報告はありません。ですので、生活習慣病重症化予防のための量(上限値)も設定されていません。

【モリブデンが欠乏すると】

モリブデンをほとんど含まない高カロリー輸液を用いた完全静脈栄養を18か月間継続された実験では血漿メチオニンと尿中チオ硫酸の増加、血漿と尿中尿酸及び尿中硫酸の減少、神経過敏、昏睡、頻脈、頻呼吸などが発症しています。これらの症状がモリブデン酸塩の投与で消失したことから、この症例はモリブデン欠乏だと考えられています。しかし、現在モリブデン欠乏に関する報告はこの一例のみとなっています。

【摂取量目安】

・成人・高齢者(推定平均必要量、推奨量)

22µg/日のモリブデン摂取を102日間継続した4人のアメリカ人男性において、モリブデン出納は平衡状態が維持され、かつモリブデン欠乏の症状は全く観察されていません。この22µg/日に、汗、皮膚などからの損失量を他のミネラルのデータから3µg/日と推測し、これを加えた25µg/日が推定平均必要量の参照値とされました。この参照値から4人のアメリカ人の平均体重76.4kgと性別及び年齢区分ごとの参照体重に基づき、性別及び年齢区分ごとの推定平均必要量を体重比の0.75乗を用いて外挿することで算定されました。なお、参照値として用いた25µg/日は、アメリカ・カナダの食事摂取基準及びWHOも採用しています。参照値が被験者4人の1論文に依存したものであるので、個人間の変動係数を15%と見積もり、性別及び年齢区分ごとの推奨量は、推定平均必要量に推奨量算定係数1.3を乗じた値とされました。

・小児(推定平均必要量、推奨量)

小児の推定平均必要量の根拠となる信頼性の高いデータはありません。そこで、アメリカ・カナダの食事摂取基準と同様に、小児の性別及び年齢区分ごとの参照体重に基づき体重比の0.75乗と成長因子を用いて成人の参照値より外挿することによって、推定平均必要量を算出されました。推奨量は、成人と同様に推定平均必要量に推奨量算定係数1.3を乗じた値とされました。

・乳児(目安量)

日本人の母乳中モリブデン濃度については、0.8〜34.7µg/L中央(値2.9µg/L)という報告と、0.1未満〜25.91µg/L(中央値3.18µg/L)という報告があります。両報告の中央値を平均した3.0µg/Lを日本人の母乳中モリブデン濃度の代表値として、基準哺乳量(0.78L/日)を乗じて得られる2.34µg/日を丸めた2µg/日が0〜5か月児の目安量とされました。
6〜11か月児に関して、0〜5か月児の目安量(2.34µg/日)を体重比の0.75乗を用いて外挿し、男女の値を平均すると2.99µg/日となります。一方、成人の推定平均必要量の参照値を体重比の0.75乗と成長因子を用いて外挿し、男女の値を平均すると6.23µg/日となります。6〜11か月児の目安量はこれら二つの値の平均値(4.61µg/日)を丸めて5µg/日ととされました。

・妊婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)

妊娠中の付加量を推定し得るデータがない為、妊婦への付加量の設定は見合わられました。

・授乳婦の付加量(推定平均必要量、推奨量

日本人の母乳中モリブデン濃度(3.0µg/L)、基準哺乳量(0.78L/日)、日本人女性の食事中モリブデンの吸収率(93%)を用いて算定される2.52µg/日(3.0×0.78÷0.93)を丸めた3µg/日が授乳婦の付加量(推定平均必要量)とされました。付加量(推奨量)は、付加量(推定平均必要量)に推奨量算定係数1.3を乗じて得られる3.27µg/日を丸めた3 µg/日とされました。

参照・・厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書

【モリブデンを多く含む食材】

・大豆
・やぶまめ
・豚レバー
・落花生
・枝豆
・豆もやし
・納豆
・あまのり
・白米
・小豆     など

【モリブデンを多く含む食材ランキング:野菜・動物性食品外編】※100gあたり

1位:いり大豆(豆類 だいず 青大豆) 800㎍
いり大豆の他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質34.8g、ナトリウム4mg、カリウム2000mg、カルシウム160mg、マグネシウム250mg、リン650mg、鉄6.7mg、亜鉛4.2mg、銅1.29mg、マンガン2.90mg、ヨウ素1㎍、セレン5㎍、クロム2㎍、ビタミンA1㎍、ビタミンD0mg、ビタミンE30.4mg、ビタミンK38㎍、ビタミンB1 0.15mg、ビタミンB2 0.27mg、ナイアシン2.2mg、ビタミンB6 0.45mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸250㎍、パントテン酸0.57mg、ビオチン25.0㎍、ビタミンC1mg、水溶性食物繊維2.2g、不溶性食物繊維16.2g

2位:やぶまめ(乾) 460㎍
やぶまめの他成分:たんぱく質23.4g、ナトリウム5mg、カリウム1700mg、カルシウム55mg、マグネシウム63mg、リン230mg、鉄2.4mg、亜鉛1.4mg、銅0.31mg、マンガン1.03mg、ヨウ素0㎍、セレン1㎍、クロム0㎍、ビタミンA0㎍、ビタミンD0mg、ビタミンE0mg、ビタミンK0㎍、ビタミンB1 0mg、ビタミンB2 0mg、ナイアシン0mg、ビタミンB6 0mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸0㎍、パントテン酸0mg、ビオチン0㎍、ビタミンC0mg

3位:りょくとう(豆類 全粒 乾) 410㎍
りょくとうの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質20.2g、ナトリウム0mg、カリウム1300mg、カルシウム100mg、マグネシウム150mg、リン320mg、鉄5.9mg、亜鉛4.0mg、銅0.91mg、マンガン0mg、ヨウ素0㎍、セレン2㎍、クロム3㎍、ビタミンA13㎍、ビタミンD0mg、ビタミンE7.3mg、ビタミンK36㎍、ビタミンB1 0.70mg、ビタミンB2 0.22mg、ナイアシン2.1mg、ビタミンB6 0.52mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸460㎍、パントテン酸1.66mg、ビオチン11.2㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維0.6g、不溶性食物繊維14.0g

4位:ささげ(豆類 全粒 乾) 380㎍
ささげの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質19.2g、ナトリウム1mg、カリウム1400mg、カルシウム75mg、マグネシウム170mg、リン400mg、鉄5.6mg、亜鉛4.9mg、銅0.71mg、マンガン0mg、ヨウ素0㎍、セレン6㎍、クロム6㎍、ビタミンA2㎍、ビタミンD0mg、ビタミンE15.9mg、ビタミンK14㎍、ビタミンB1 0.50mg、ビタミンB2 0.10mg、ナイアシン2.5mg、ビタミンB6 0.24mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸300㎍、パントテン酸1.30mg、ビオチン11.1㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維1.3g、不溶性食物繊維17.1g

同率4位:らいまめ(豆類 全粒 乾) 380㎍
らいまめの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質18.8g、ナトリウム0mg、カリウム1800mg、カルシウム78mg、マグネシウム170mg、リン250mg、鉄6.2mg、亜鉛2.9mg、銅0.70mg、マンガン1.85mg、ヨウ素0㎍、セレン17㎍、クロム3㎍、ビタミンA0㎍、ビタミンD0mg、ビタミンE5.1mg、ビタミンK6㎍、ビタミンB1 0.47mg、ビタミンB2 0.16mg、ナイアシン1.9mg、ビタミンB6 0.40mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸120㎍、パントテン酸1.05mg、ビオチン9.2㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維1.4g、不溶性食物繊維18.3g

6位:赤えんどう・青えんどう(豆類 えんどう 全粒 乾) 280㎍
赤えんどうの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質21.7g、ナトリウム1mg、カリウム870mg、カルシウム65mg、マグネシウム120mg、リン360mg、鉄5.0mg、亜鉛4.1mg、銅0.49mg、マンガン0mg、ヨウ素1㎍、セレン11㎍、クロム2㎍、ビタミンA1㎍、ビタミンD0mg、ビタミンE6.9mg、ビタミK16㎍、ビタミンB1 0.72mg、ビタミンB2 0.15mg、ナイアシン2.5mg、ビタミンB6 0.29mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸24㎍、パントテン酸1.74mg、ビオチン16.0㎍、ビタミンC0mg、水溶性食物繊維1.2g、不溶性食物繊維16.2g

7位:えだまめ(野菜類 生) 240㎍
えだまめの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質10.0g、ナトリウム1mg、カリウム590mg、カルシウム58mg、マグネシウム62mg、リン170mg、鉄2.7mg、亜鉛1.4mg、銅0.41mg、マンガン0.71mg、ヨウ素0㎍、セレン1㎍、クロム1㎍、ビタミンA22㎍、ビタミンD0mg、ビタミンE9.9mg、ビタミK30㎍、ビタミンB1 0.31mg、ビタミンB2 0.15mg、ナイアシン1.6mg、ビタミンB6 0.15mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸320㎍、パントテン酸0.53mg、ビオチン11.1㎍、ビタミンC27mg、水溶性食物繊維0.4g、不溶性食物繊維4.6g

8位:つるあずき(豆類全粒、乾) 220㎍
つるあずきの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質17.4g、ナトリウム1mg、カリウム1400mg、カルシウム280mg、マグネシウム230mg、リン320mg、鉄11.4mg、亜鉛3.1mg、銅0.73mg、マンガン2.92mg、ヨウ素0㎍、セレン3㎍、クロム4㎍、ビタミンA2㎍、ビタミンD0mg、ビタミンE13.7mg、ビタミK50㎍、ビタミンB1 0.50mg、ビタミンB2 0.13mg、ナイアシン2.0mg、ビタミンB6 0.28mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸210㎍、パントテン酸0.75mg、ビオチン9.7㎍、ビタミンC3mg、水溶性食物繊維1.3g、不溶性食物繊維20.7g

同率8位:あまのり(藻類 焼きのり) 220㎍
あまのりの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質31.2g、ナトリウム530mg、カリウム2400mg、カルシウム280mg、マグネシウム300mg、リン700mg、鉄11.4mg、亜鉛3.6mg、銅0.55mg、マンガン3.72mg、セレン9㎍、クロム6㎍、ヨウ素2100㎍、ビタミンA2300㎍、ビタミンD0㎍、ビタミンE4.6mg、ビタミンK390㎍、ビタミンB1 0.69mg、ビタミンB2 2.33mg、ナイアシ11.7mg、ビタミンB6 0.59mg、ビタミンB12 57.6㎍、葉酸1900㎍、パントテン酸1.18mg、ビオチン46.9㎍、ビタミンC210mg

10位:あずき(豆類 全粒 乾) 210㎍
あずきの他成分:アミノ酸組成によるたんぱく質17.4g、ナトリウム1mg、カリウム1300mg、カルシウム70mg、マグネシウム130mg、リン350mg、鉄5.5mg、亜鉛2.4mg、銅0.68mg、マンガン1.09mg、ヨウ素0㎍、セレン1㎍、クロム2㎍、モリブデン210㎍、ビタミンA1㎍、ビタミンD0mg、ビタミンE14.2mg、ビタミンK8㎍、ビタミンB1 0.46mg、ビタミンB2 0.16mg、ナイアシン2.2mg、ビタミンB6 0.40mg、ビタミンB12 0㎍、葉酸130㎍、パントテン酸1.02mg、ビオチン9.6㎍、ビタミンC2mg、水溶性食物繊維7.7g、不溶性食物繊維17.1g

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